世界第1位の長寿国、日本。高齢化などの社会問題を解決するため、テクノロジーは日々多様に進化しています。医療も高度化し、それを支える医療機器もより高度に複雑化が進んでいます。2021年には医療法が改正され、これまで医師が担ってきた作業の一部が臨床工学技士の業務範囲となりました。「臨床工学技士」は、医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格であり、いのちのエンジニア、医療機器のスペシャリストとしてチーム医療に貢献するメディカルスタッフです。高度化した医療機器を効果的に、そして精密に使いこなすには、工学と医療の両方の知識・スキルを兼ね備えた高い専門性を持つ人材が求められます。
これらの背景を踏まえ、大阪工業大学では「臨床工学技士」の受験資格が得られるコースを生命工学科に新設します。
生命工学科の卒業生には、以前より、3年次在学中の専門学校夜間専攻科のダブルスクールや卒業後1年間の学修を経て臨床工学技士として社会で活躍している卒業生がいます。
在学中の学びだけで臨床工学技士の受験資格が得られるカリキュラムの新設により、本学はこうした進路を志す学生に向けて最大限のサポートを提供します。
生命科学から医工学まで、多様な分野の探究に役立つ豊富な設備・機器を取りそろえた教育環境で、今後の臨床工学技士に求められる工学に関する幅広い知識・スキルを有し、将来にわたって医療機器の高度化・複雑化に対応できる先端的人材を育成します。
また、同一法人で医療系学部を有する「広島国際大学」との連携で、腹腔鏡手術機器など高度医療機器を用いた実習を提供し、医療技術者としての高度な実践力獲得をサポートします。
臨床工学技士養成コースは、本学生命工学科に入学後の1年次7月頃にコース受講者を決定
臨床工学技士養成コースは、本学生命工学科に入学後の1年次7月頃にコース受講者を決定します。学科が展開する生命科学・医工学・食品などの幅広い分野を学修し、将来への視野を広めながら臨床工学技士を目指す選択が可能です。
学園が有する教育資源を効果的に活用し、
実りある教育を実現
同一法人の広島国際大学は、臨床工学技士の養成において25年以上の実績を積み重ねています。夏期に同大学に滞在して実習するなど、学園が有する教育資源を効果的に活用し、実りある教育を実現します。
2023年度実就職率ランキング
関西の私立大学の中で14年連続第1位
2023年度実就職率ランキングにおいて、本学は関西の私立大学の中で14年連続第1位の実績を誇っています。臨床工学技士を目指す生命工学科学生にも、本学の高い就職支援力にもとづく幅広い進路が開けます。
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坂井勇亮さん
西脇工業高等学校卒
2014年工学研究科生体医工学専攻博士前期課程修了
特定医療法人桃仁会病院臨床工学部
父が自動車整備の仕事をしていたこともあり、元々“工学”に興味がありました。高校2年生の時に大病を患い、医師や医療関係者に命を救ってもらったことがきっかけで、“医療”と“工学”の分野を総合的に学べる学科がある大阪工業大学生体医工学科(現:生命工学科)を志望しました。CEは大学入学後、医療工学を学ぶ中で初めて知りました。在学中に夜間の専門学校に通うことで大学卒業と同時に就職できる条件が揃っていることも魅力に感じ、1年次でCEになることを決心しました。
とにかく勉強に部活に一生懸命で充実した大学生活でした。3年次からの2年間は、CEの資格を取得するために夜間の専門学校に通っていたので、平日は朝から夜まで勉強し、合間にアルバイトや英会話などにも取り組むという生活でした。学部卒業時には、医療機器メーカーへの就職か大学院進学か迷った時期もありましたが、更に専門性を深め、学会発表など研究者としての経験も積みたかったので、進学を選択しました。
腎臓が悪く体内の老廃物を体外に排泄できない患者さんに対して、人工腎臓を使った血液透析という治療方法を病院で行っています。桃仁会病院は血液透析102床を誇り、京都府最大の透析治療施設として血液透析医療を中心とした腎不全治療を行っています。最大で同時に25人ほどの患者さんを診ながら、装置の設定を細かく操作する必要があるため、高い集中力を要求される仕事ですが、治療が終わった患者さんからいただく感謝の言葉は何にも代え難くやりがいを感じます。
何かトラブルが生じた際などに、その原因について仮説を立て、検証するという思考法は、学生時代に鍛えられ、臨床の現場でも生かされていると感じます。例えば、患者さんの血圧が下がった際には、なぜそうなったのか原因を探り、対処法を考えますが、そうしたプロセスは大学での実習や研究などで求められる思考と共通すると思います。また、医療と工学の両方の知識を持っているため医療機器の測定原理が理解でき、トラブルに対してもいち早く解決策を提案する事ができています。
CEは非常にやりがいのある仕事です。AIなどにより常識が目まぐるしく変化する時代。医療に携わる人間も、数理・データサイエンス的な知識を持つことが求められると思います。つまり、これからの時代は、医療だけでなく、工学の知見を持つCEが必要不可欠になります。大阪工業大学で“医”の臨床(医学分野)と“工”のものづくり(工学分野)の両方を学べる大阪工業大学生命工学科への入学をオススメします。
梶山梓さん
常翔学園高等学校卒
2013年工学部生体医工学科
(現:生命工学科)卒
日本赤十字社大阪赤十字病院医療技術部臨床工学技術課
中学、高校と理数系が得意で、両親が医療関係者であったため、自然と“医療”と“工学”の両方に興味を持ちました。人工心肺など工業大学で“医療”についても学べるところが決め手になり大阪工業大学への進学を決めました。
大学入学後のオリエンテーションで初めて臨床工学技士を知りました。当時は、大学に通いながら同時に専門学校で学ぶ事で国家資格を取ることができ、自分でもCEについて調べてみると、体外循環や人工呼吸器の管理など、とても興味のある職種であったため、目指すことにしました。
人工呼吸器や人工心肺装置などを実際に触って学習する授業や病気・病態の種類を詳しく学べる授業は特に印象に残っています。また、所属した研究室は医療ロボットに関する研究を行っており、より医療現場を意識することができましたし、卒業研究では視覚障がい者の脳を活性化させるための楽器開発を行うなど、医療に対する工学的なアプローチを実践することもできました。
入職後5年ほどは人工心肺業務、心臓カテーテル室業務、機器管理業務、手術室業務、血液浄化業務とさまざまな部署で経験を積んでいました。手術室業務では、心臓手術など心肺を停止して行わないといけない手術で、私たちCEが患者さんの心臓の代わりとなる人工心肺装置を操作してチーム医療に貢献します。時には手術時間が15時間にも及ぶときもあり、高い集中力が必要となりますが、患者さんの治療に自分が貢献でき、回復されたときはとても誇らしく、やりがいを感じます。妊娠・出産を期に、現在は機器管理業務のみに従事しています。業務内容は医療機器の点検・修理、人工呼吸器の使用中点検や院内の看護師などの多職種への研修会の実施などです。
生体医工学科で学んだことで医療と工学の幅広い知識を学ぶことができました。そのおかげか医療機器の修理やその扱いに苦労することが少なく感じます。また、脳活動を計測するNIRS(近赤外分光法)という医療にも使われる機器を取り扱った経験や研究活動のためのインフォームドコンセントの手続きなど、医療・臨床と工学の両方を取り扱うことができ、今の業務にも生きている学びがたくさんありました。
私は大学選択時に就職のことまでは考えられていませんでしたが、入学後のガイダンスで臨床工学技士について知る機会があり、実際に医療の現場に立つことができました。工学の目線を持つ医療従事者はCEだけなので、医療の質を向上させるうえで重要な役割を担う職種です。みなさんもきっと医療の最前線で活躍することができると思います。一緒に医療の最前線で働けることを楽しみにしています。
※内容は当時のものです。2025年度入学者より特定の科目を修得することで、臨床工学技士国家試験の受験資格を得ることができます。
●オンラインまたはオンデマンド科目
〇広島国際大学での夏期実習科目
コース開始の際には、一部変更の可能性があります。
本コースでは通常の授業(カリキュラム)に加え、臨床工学技士国家試験の合格に向けたさまざまなサポート体制を整えています。
自主的な学習をサポートするために、「オンデマンド解説による自己学習の啓発」「担当教員制及び個別の学修支援」「コース内メンバーとのグループ学習(友人同士で相談しながら過去問題を解答し、適宜担当教員に質疑・相談を行う)」などの体制・環境を提供します。
加えて、年次毎の重点学習サポートとして、1年次は「数学や物理、電気工学などの工学基礎科目支援」、2年次は「生物物理学や各種治療機器学などの臨床工学科目支援」、3年次は「第2種ME技術実力検定試験の合格支援」、そして4年次では「国家試験過去問の臨床工学技士による学修支援」を行います。
第2種ME技術実力検定試験は、医療機器の安全管理を中心とした専門知識や応用力などを証明する民間資格で、試験内容が臨床工学技士国家試験に近いため、検定試験の受験を通してこれまでの学修成果を可視化できます。また、本資格を取得することで「第2種ME技術者(医療機器の安全管理に関するエキスパート)」として働くことが可能となり、医療機器メーカーなど就職先の幅も広がります。
4年次の臨床工学技士による学修支援では、実際の臨床現場で働いている臨床工学技士を招き、臨床工学技士国家試験のポイント解説やエキストラ講座を行い、単元ごとの国家試験対策を実施します。
このように、入学後のカリキュラム実施に加えて、臨床工学技士国家試験への合格に向けたさまざまなサポート体制を整えており、志を共にするコースメンバーと共に担当教員一丸となって4年間の学修を進めていきます。
臨床工学実習では、人工呼吸器や人工心肺装置、人工透析装置を実際に操作することで体外循環法や血液浄化法などの実習を行います。これらの機器を用いた実習は、臨床工学のフィールドで必要不可欠な実践力を育て上げ、臨床工学技士として求められる個々の患者さんの状況に対応できる人材育成に寄与します。本実習についても、複数名の専門教員が担当しますので、きめ細やかな実習体制が整っています。
基礎工学実習では、オシロスコープやマルチメーター、ワンボードマイコンなどの電気・電子・情報機器を利用した実習を複数名の担当教員指導の下で行います。本実習を通して、臨床工学技士に必要不可欠なエンジニアとしての基礎知識や技術を身につけていくことで、臨床工学技士として現場で求められる医療機器の保守管理能力を養います。
基礎医学実習では、顕微鏡や標本作製装置を用いた解剖実習などを通して、臨床工学技士として必要な人体の構造や働きに関する知識を身につけていきます。また、複数名の専門教員担当の下、標本模型などを活用し、臨床工学技士として身につけておくべき血液に関する医学的知識や穿刺(血管に針を刺す)技術についても学んでいきます。
大阪工業大学 工学部 生命工学科
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